Vol.2 AIを入れたのに、半年経っても忙しい理由 — 「頼む」と「仕組みにする」の違い

Vol.2 AIを入れたのに、半年経っても忙しい理由 — 「頼む」と「仕組みにする」の違い

コスト削減

Vol.2 AIを入れたのに、半年経っても忙しい理由 — 「頼む」と「仕組みにする」の違い

ChatGPTやClaudeを使い始めて半年。議事録の要約も、メール文面の下書きも、調査のまとめも、確かに便利だ。でも、ふと気づく。忙しさは変わっていない

Vol.1では、事務量が減らない正体は「伝言ゲーム」だということを書きました。ツール同士が繋がっていないから、人が間に立ってデータを運んでいる。その構造を変えるためにAIを入れた会社は多いと思います。ところが——

ChatGPTやClaude、最近ではGeminiも加わり、AIツールを業務で使い始めた方は多いと思います。議事録の要約、メール文面の下書き、調査のまとめ、提案書のたたき台。確かに便利です。私たちFluxxでも日常的に使っています。

ところが、導入から半年ほど経ったクライアントから、こんな声をよくいただきます。

「AIを使い始めてから確かに助かっているけど、忙しさは変わっていない」

これは珍しい話ではありません。むしろ、AI活用の初期段階では多くの会社がぶつかる壁です。

なぜ「使っているのに楽にならない」のか

都度AI利用の隠れたコスト

理由はシンプルです。AIに毎回「頼んでいる」だけだからです。

ちょっと振り返ってみてください。「この会議メモ、要約して」「この請求書の内容を整理して」「このメール、いい感じに直して」「この資料をもとに提案文を作って」。どれも便利ですし、実際に時間も少しは浮きます。でも、浮いた時間って体感できていますか?

実はこういう使い方をしていると、目に見えないコストが積み重なっています。依頼文を考える。前提を補う。出力が合っているか確認する。保存する。共有する。次の人に渡す。例外があれば自分で処理する。つまり、AIが途中の一工程を助けてはいても、仕事全体の流れは変わっていないのです。

単発業務と固定業務を分けて考える

単発業務と固定業務の違い

ここで大事なのは、業務には2つの種類があるという点です。

単発業務(毎回条件が違う仕事)

  • 特徴: 毎回、前提や相手が異なる。その場の判断が求められる
  • 例: 提案の方向性を考える、クライアントとの交渉、例外対応
  • AIの使い方: 都度チャットで相談する。これは正しい使い方

固定業務(入力・判断・出力が決まっている仕事)

  • 特徴: やることが毎回ほぼ同じ。手順が決まっている
  • 例: 書類の整理・保存、定例通知の送信、一覧の更新
  • AIの使い方: 固定フローに組み込む。都度頼むのではなく、仕組みにする

提案の方向性を考えたり、クライアントの要望をどう解釈するかといった仕事は、毎回状況が違います。こうした単発業務にはAIへの「都度相談」がよく合います。

一方で、受け取った書類を分類して保存する、毎週決まった形式のレポートを作る、といった仕事は、入力と出力のパターンがほぼ決まっています。こうした固定業務に対して毎回AIに手動で頼んでいるのは、本来自動化できるはずの作業を手動で回し続けているということです。

ここで誤解してほしくないのは、「手動でAIに頼むのが悪い」という話ではないということです。むしろ、最初はそこから始めるのが自然です。問題は、半年経っても同じ頼み方をしていること。同じプロンプトを何十回もコピペしているなら、それはもう「仕組みにできる」というサインです。

AIの本当の価値は「実行」ではなく「分解」にある

AIの本当の価値は分解にある

AIが得意なのは、曖昧な業務を再現可能な手順に分解することです。

たとえば「請求書を処理する」という業務。ざっくりした一言ですが、分解してみるとこうなります。受け取る。開く。会社名や金額や支払期日を読む。保存する。後で探せる形にする。必要な人に知らせる。支払一覧や会計処理につながる場所へ渡す。ひとつひとつは単純ですが、7つのステップがあります。そして、そのほとんどは条件が明確なので自動化できます。

この「分解」こそがAI活用の起点です。分解さえできれば、あとは固定フローとして仕組みに落とせます。逆に言えば、分解しないまま「AIに丸投げ」しようとすると、結局うまくいきません。よく「AIに請求書処理を任せたい」というご相談をいただきますが、最初にやるべきは「請求書処理って具体的にどの手順のことですか?」と分解することなのです。

Fluxxが実際にやっていること

AI活用のBefore/After

私たちFluxxでは、AIに「全部いい感じにやって」とは頼んでいません。まず業務を分解して、固定化できる部分だけを仕組みに落としています。

いちばんわかりやすい例が、請求書の処理です。

Before: AIに都度頼んでいた頃

以前は、取引先から届いた請求書をこう処理していました。

メールで届いたPDFを開く。AIに「この請求書の会社名、金額、支払期日を教えて」と頼む。出力を確認する。Google Driveに保存する。ファイル名を手で整える。スプレッドシートの台帳に転記する。経理チャンネルに「届きました」と投稿する。

AIが読み取りを助けてくれる分、以前よりは速い。でも、プロンプトを書く→出力を確認する→保存する→転記する→共有する、は全部手動のままでした。月に20枚届けば、20回同じことをやっている。

After: 固定フローに落とした今

今は、届いた請求書をSlackの経理botに転送するだけです。あとは自動で回ります。

  • AIが会社名・金額・支払期日・請求書番号を読み取る
  • 電子帳簿保存法に対応したファイル名でGoogle Driveに保存
  • 索引簿(スプレッドシート)に自動追記
  • Slackに「処理完了しました」と通知が返る
  • 支払期日が近づくと、リマインド通知も届く

人がやるのは、最後に「読み取り結果がおかしくないか」をざっと確認するだけです。月20枚の請求書処理にかかっていた時間が、ほぼゼロになりました

ポイントは、AIの性能が上がったから速くなったのではない、ということです。業務を「受信→読み取り→保存→索引→通知」の5ステップに分解し、それを固定フローにしたから速くなった。AIはその中の「読み取り」を担っているだけで、仕組み全体の設計が本質です。

仕組みの保守も、仕組みにする

仕組みの保守サイクル

自動化を入れると、次に必ず起きるのが「止まっていたのに気づかなかった」問題です。

これ、本当に怖いんです。実際にあった話をします。月曜の朝、先週分のレポートを確認しようとしたら、データが丸ごと欠けていた。「あれ、金曜分は?」と遡ってみると、木曜の深夜から処理が止まっていた。原因は、外部サービス側のAPI仕様がひっそり変わっていたこと。エラーは出ていたけれど、通知の仕組みがなかったので誰も気づかなかった。自動で動いているものは、止まっても誰にも怒られません。だから気づけない。

Fluxxでは、この問題にも仕組みで対処しています。自動処理がエラーを起こしたら、まずAIが自動で原因を調査し、修正を試みます。修正できた場合はそのまま処理を再開し、できなかった場合だけ人間に通知が届く、という構造です。

仕組みを入れたあとの保守まで仕組み化するここまでやらないと、結局「自動処理を監視する仕事」が新たに増えるだけです。

まとめ: AIは「便利な相談相手」で終わらせない

AIを入れても忙しいままなのは、AIの性能の問題ではありません。使い方の問題です。

  • 単発業務にはAIへの都度相談が向いている
  • 固定業務は都度相談ではなく、固定フローに落とすべき
  • AIの本当の価値は、曖昧な業務を再現可能な手順に分解すること
  • 仕組みの保守まで仕組み化して、はじめて「楽になった」と言える

同じプロンプトを何度もコピペしているなら、それは仕組み化のサインです。社長が個人的にChatGPTを使っている段階でも、社内にAIツールを導入した段階でも、考え方は同じです。ちょっと立ち止まって考えてみてください。毎回同じことをAIに頼んでいないか? もし思い当たる作業があれば、それは仕組み化の候補です。最初の一歩は、その作業を分解してみることから始まります。

次回のVol.3では、月次決算が閉まらない会社で起きていることと、それを自動化したら何が見えたかを書きます。

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Author

大平 兼士

大平 兼士

CEO

神戸大学経済学部卒業後、株式会社ミクシィにてminimoの立ち上げやマッチングアプリのWEBマーケティングに従事。2018年5月に株式会社Fluxx設立。2019年より株式会社メディロムに参画し、現在はメディロム・シェアードサービス取締役を兼任。