Vol.4 「あの人がいないと回らない」が口癖になっている会社で起きていること — 仕事を書き出したら属人化が消えた話

Vol.4 「あの人がいないと回らない」が口癖になっている会社で起きていること — 仕事を書き出したら属人化が消えた話

コスト削減

社内で「あの人がいないと回らない」という言葉が、褒め言葉として使われていることがあります。

その人が休んだ日に、仕事が止まる。判断が遅れる。「それは○○さんに聞かないとわからない」で、メールもチャットも返せない。そして翌日、その人が出社すると一気に動き出す。こういう光景を見て「やっぱりあの人がいないとダメだ」と、全員がうなずく。

でもこれは、その人が優秀だという話ではありません。正確に言うと、仕事の手順と判断基準が、その人の頭の中にしか存在していないという話です。

私たちFluxxでも、以前はこの状態に片足を突っ込んでいました。今回は、属人化がなぜ起きるのか、どうすれば仕組みで解消できるのかを、私たちの実例をもとに書いてみます。

属人化は「能力の問題」ではなく「記録の問題」

暗黙知の構造

属人化という言葉は、特定の人に仕事が集中している状態を指します。ですが、集中しているのは仕事そのものだけではないんです。仕事のやり方・判断の基準・例外時の対応方法が、その人の経験と記憶の中だけにある。これが本体です。

たとえば、請求書を出すタイミング。クレーム対応の優先順位。新規顧客への初回連絡の手順。こうした「暗黙のルール」は、文書にもマニュアルにもなっておらず、聞かれたら答えられるけど、書き出されたことがない。

だから、その人がいないと回らないのではなく、その人の頭の中にある情報にアクセスできないから回らない。ここを混同している会社は多いと思います。

売れる人をそのまま管理職にする、よくある失敗

役割のミスマッチ

属人化が加速するパターンとして多いのが、プレイヤーとして優秀な人に管理業務を載せてしまうケースです。

営業成績がいい人を営業部長にする。制作の腕がいい人をディレクターにする。本人も周囲も自然な昇進だと感じます。ですが問題は、その人がプレイヤー時代に使っていた暗黙のやり方が、そのまま部署のルールになってしまうことです。

本人は無意識にやっている。周囲は「あの人のやり方」としか認識していない。結果として、部署全体がその人の頭の中にあるルールで動く構造ができあがる。その人が抜けたら、ルールごと消えます。

これは本人の責任ではありません。仕事の手順を書き出す仕組みも、時間も、文化もなかっただけです。ここは、私たちも試行錯誤しました。

会社の規模で、属人化の現れ方は変わる

規模別の属人化パターン

属人化は、どの規模の会社でも起きます。ただし、見え方が違います。

ひとり社長〜数名の会社

いちばんの属人ポイントは社長自身です。取引先との関係、価格の決め方、請求のルール、採用の基準、すべてが社長の頭の中にある。社長が倒れたら会社が止まる。これは属人化の最たるものですが、本人が気づきにくい。なぜなら「自分がやるのが当たり前」だからです。私自身、以前はまさにこの状態でした。

10人を超えた会社

特定のベテラン2〜3人に業務が集中します。「この案件は田中さんに聞いて」「請求周りは鈴木さんしかわからない」が日常になる。ベテランたちは忙しく、マニュアルを作る時間がない。新人は聞かないと動けない。ベテランはさらに忙しくなる。悪循環です。

そしてどちらの規模でも共通しているのは、その人たちが辞めたとき、業務だけでなく判断基準ごと失われるということです。引き継ぎ資料を急いで作っても、暗黙知の大半は抜け落ちます。

Fluxxでやったこと:まず「人がやっている仕事」を全部書き出した

仕事を2つに分ける

ここからは、私たちFluxxが属人化をどう解消してきたかの話です。

最初にやったのは、地味に聞こえるかもしれませんが「仕事を全部書き出す」ことでした。誰が、何を、どういう手順でやっているかを一覧にする。ツールの導入でも、AIの活用でもありません。まず書き出す。

これをやると、仕事が大きく2種類に分かれることがわかります

  • 判断が必要な仕事 — 状況を見て、経験や知識をもとに決める。例:クライアントへの提案内容、クレーム対応の方針、採用の合否
  • 手順が決まっている仕事 — やることが毎回ほぼ同じ。例:請求書の受取と保存、期限超過タスクの確認、定例レポートの作成

属人化が起きているのは、この2つが混ざっている状態です。本来は手順どおりにやればいい仕事まで、特定の人の「やり方」に依存している。

手順が決まっている仕事を「固定フロー」に落とす

固定フローの構造

書き出した仕事のうち、手順が決まっているものは固定フローに変えていきます。固定フローとは、入力→処理→出力→保存→通知の流れが決まっている状態のことです。

たとえば、Fluxxでは以下のような業務を固定フローにしました。

期限超過タスクの通知
以前は、誰かが毎朝タスク一覧を見て「これ期限過ぎてるよ」と声をかけていました。今は、期限を過ぎたタスクを自動で検知し、担当者にSlackで通知が飛びます。人が見張る必要がなくなりました。

新メンバーの受け入れ準備
新しいメンバーが入社するとき、やることは毎回ほぼ同じです。メールアカウントの発行、チャットツールへの招待、タスク管理ツールへの追加、社内マニュアルの共有。以前は「誰かがやってくれる」状態で、担当者が休むと漏れが出ていました。今は、Notionにメンバー情報を登録した時点で、必要なセットアップが順番に進む仕組みになっています。

定例レポートの生成
月次の数値を集めて、フォーマットに整えて、関係者に共有する。集める場所もフォーマットも毎回同じなら、人がやる必要はありません。データソースから数値を取得し、レポートを整形し、チャンネルに投稿するところまで、決まった手順で回しています。

固定フローにできた仕事は、人に依存しない

ここで大事なのは、固定フローに落とせた仕事は特定の人がいなくても回るということです。手順が決まっていて、入力と出力が定義されていれば、誰がやっても同じ結果になります。そしてもっと言えば、人がやらなくても同じ結果になります。決まった手順をそのまま実行する仕組みに変えられるからです。逆に、判断が必要な仕事は人に残します。クライアントへの提案方針、例外的なトラブル対応、新しい取り組みの意思決定。こうした仕事は、経験と文脈が必要です。つまり、属人化の解消とは「人を減らす」ことではありません。人がやるべき仕事と、仕組みに任せられる仕事を分けることです。

書き出すだけで、見えるものが変わる

仕事の書き出しと固定フロー化をやって気づいたことがあります。属人化している仕事の多くは、実はそこまで難しくないんです。手順自体は単純なのに、その手順が特定の人の記憶の中にしかなかった。だから属人化していた。書き出してみると、「これ、別にあの人じゃなくてもできるな」という仕事がかなり出てきます。そして固定フローに落とせるものはさらに多い。Fluxxでは、この書き出しを経たことで、「あの人がいないと回らない」が「仕組みが回っている」に変わりました。特定の人に負荷が集中する構造が消え、その人たちは本来の判断業務に集中できるようになっています。

まとめ:属人化は、書き出した瞬間から消え始める

「あの人がいないと回らない」が口癖になっている会社では、仕事の手順と判断基準が人の頭の中に閉じ込められています。解消の第一歩は、ツール導入でもAI活用でもなく、まず仕事を全部書き出すことです。書き出せば、判断が必要な仕事と手順が決まっている仕事に分かれる。手順が決まっている仕事を固定フローにすれば、人に依存しなくなる。小さな会社でも、社員が増えた会社でも、やることは同じです。もし「あの人がいないと回らない」に心当たりがあるなら、まず1つ、書き出すところから始めてみてください。社長の頭の中にあるルールも、ベテランだけが知っている手順も、書き出して固定フローにできるなら、それはもう属人化ではなくなります。次回のVol.5では、毎月届くツールの請求書に「これ要る?」と感じたときに考えるべきことを書きます。

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Author

大平 兼士

大平 兼士

CEO

神戸大学経済学部卒業後、株式会社ミクシィにてminimoの立ち上げやマッチングアプリのWEBマーケティングに従事。2018年5月に株式会社Fluxx設立。2019年より株式会社メディロムに参画し、現在はメディロム・シェアードサービス取締役を兼任。