人を雇う前に、会社の仕事を分解してみる
前回のVol.4 月初に仕事が止まる会社、止まらない会社 では、定型業務を固定フローに落とすと、毎月の重い仕事がかなり軽くなることを見ました。では、そのあとに残る仕事は何か。今回はそこを見ます。
会社をやっていると、あるタイミングでこう思います。
「そろそろ人を増やさないと厳しいかもしれない」
問い合わせ対応が増えた。確認作業が積み上がっている。レポート作成や社内共有に時間を取られている。現場からも「手が足りない」と声が上がる。そうなると、自然と採用を考えます。
もちろん、採用が必要な場面はあります。
ただ、その前に一度だけ見てほしいことがあります。誰が、どんな仕事に時間を使っているかです。
というのも、多くの会社では「人が足りない」のではなく、「本来やらなくていい仕事まで、人が抱えている」状態が起きているからです。
売れる人を、管理職にしていませんか
これはかなりよくある話です。
営業で成果を出している。だから営業マネージャーにする。制作で強い。だから進行管理もチーム管理も全部持ってもらう。現場で頼れる。だから、あらゆる確認のハブになってもらう。
でも実際には、プレイヤーとして強い人と、マネージャーとして強い人は別です。
顧客を動かすのが強い人が、チーム運営まで向いているとは限らない。逆に、優秀なプレイヤーに管理と取りまとめを載せた結果、本人の強みも落ち、マネジメントも中途半端になることがあります。
役職を上げることと、その人の価値が一番出る場所をつくることは、同じではありません。
ここを雑にやると、会社の中でいちばん成果を出していた人の時間を削って、そのうえ新しい役割でも成果が安定しない、ということが起きます。
代表やマネージャーが、整形と転記を抱えていませんか
もっと日常的に起きている問題もあります。
代表やマネージャーが毎週レポートを整えている。制作責任者が進捗一覧を手で作っている。営業が問い合わせ内容を毎回同じ形に転記している。会議のたびに、前提情報を集め直すのがいつも同じ人になっている。
こういう状態は珍しくありません。
でも、これは「その人しかできない仕事をしている」わけではありません。その人がやる必要のない固定業務まで抱えている状態です。
本来、代表やマネージャーが時間を使うべきなのは、方向を決めること、優先順位を判断すること、例外に責任を持つことです。そこに整形、転記、定例共有が混ざると、意思決定すべき人の時間が削られます。
人件費の高い人に、毎回同じ整形作業をさせているなら、その会社は少し仕事の持ち方を間違えています。
忙しいのは、人が足りないからとは限りません
忙しい状態をそのまま見ると、「人を増やすしかない」に見えます。ですが実際には、1人の担当者の仕事の中に、性質の違う作業がかなり混ざっています。
本当にその人の判断が必要な仕事。ルールが決まっていて確認だけで済む仕事。情報を転記するだけの仕事。集めた情報を整形して共有するだけの仕事。
これらを全部ひとまとめにして「忙しい」と呼ぶと、解決策は採用に寄りやすくなります。でも、本来はそこから先に見るべきことがあります。その忙しさの中に、誰がやっても同じ仕事がどれだけ混ざっているかです。
ここを見ないまま採用すると、新しく入った人は、もともと仕組みに渡せたはずの仕事を引き継ぐことになります。
人に残す仕事と、仕組みに渡す仕事
では、どこで線を引けばいいのか。
人に残すべき仕事は、その場の判断や解釈が大きい仕事です。相手に合わせた提案を考える。例外案件の方針を決める。優先順位を判断する。社内外の関係者を動かす。こうした仕事は、入力が似ていても毎回同じ出力にはなりません。
逆に、仕組みに渡しやすい仕事は、入力、判断、出力がある程度決まっている仕事です。問い合わせの一次整理、会議後の議事録整形、定例レポートの作成、タスク期限の通知、請求関連の一覧作成。こうした仕事は、ルールを言葉にできるなら固定フローに落としやすい。
線引きの本質は、「簡単な仕事か難しい仕事か」ではありません。判断の中身を説明できるか、再現できるかです。
先に決めるべきは、採用人数ではなく仕事の境界線です
採用の前にやるべきことは、人数計算ではありません。まず、どこから先を人に残し、どこまでを仕組みに渡すかを決めることです。
ここが曖昧なまま採用すると、新しい人は本来いらなかった固定業務を引き継ぐことになります。しばらくするとまた同じように忙しくなり、さらに人を足したくなる。これを繰り返す会社は少なくありません。
逆に、整形、転記、定例共有のような仕事を先に外せば、人に残るのは判断と責任を持つべき部分になります。この状態になって初めて、「どんな人を採るべきか」が見えやすくなります。
Fluxxでも、先に外したのは固定業務でした
私たちFluxxでも、業務を増やすたびに「誰がやるか」ではなく、「これは人が持ち続けるべきか」を見てきました。
たとえば、問い合わせの初動対応。議事録の整理。定例レポートの整形。進捗共有のための確認作業。こうした仕事は、一見すると人が頑張るしかないように見えますが、よく分解すると入力が決まっていて、出す形もかなり決まっています。
そこで、判断ルールを言葉にし、情報の受け渡し先を整理し、仕組みに持たせられる部分を外していきました。すると人がやるべき仕事は、「考える」「決める」「例外を見る」「相手に合わせて伝える」に寄っていきます。
重要なのは、全部を自動化することではありません。高い価値を出せる人ほど、固定業務から解放することです。
採用の前に、最低限見たい4つの質問
人を増やすか悩んだときは、次の4つを先に確認してみてください。
1. その仕事は分解されているか。
まず「忙しい」をそのまま受け取らず、仕事を小さく分けて見ること。
2. その仕事は、誰がやっても同じか。
同じなら、人に残す理由をもう一度考える余地があります。
3. その仕事を、一番高い人件費の人がやるべきか。
ここで言い淀むなら、役割の置き方を見直したほうがいいです。
4. 本当に人にしかできない仕事が、どれだけ残るか。
それを見てから採用を考えると、必要な人材像も明確になります。
まとめ:採用は、仕事の境界線を決めてから考える
人を増やすこと自体は悪い選択ではありません。ただ、最初の選択肢にしてしまうと、仕組み化できたはずの仕事まで抱え込むことになりやすい。
だからこそ、採用の前に一度だけ、会社の仕事を分解してみる価値があります。誰かが毎日やっているその作業は、本当に人が持つべきものなのか。ルールにできる部分はないか。判断が必要なのはどこなのか。そして、その仕事を本当にその役職がやるべきなのか。
この視点を持つだけで、採用は「足りない穴を埋める手段」ではなく、「仕組み化したうえで残る重要業務に人を配置する判断」に変わります。
続けて読むなら、次は Vol.6 情報が散らかっている会社は、仕事が遅くなる です。仕事を分解しても会社が速くならないとき、何が止まりの原因になっているのかを見ます。
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