情報が散らかっている会社は、なぜ仕事が遅くなるのか — 正本設計で属人化を止めた話

組織

前回のVol.5 人を雇う前に、会社の仕事を分解してみる では、採用の前に人が持つべき仕事と仕組みが持つべき仕事を分ける話をしました。今回は、その仕組み化を邪魔するもう一つの原因を見ます。

仕事が遅い会社には、共通点があります。

それは、誰かが怠けていることでも、能力が足りないことでもありません。多くの場合、正本が分裂しているのです。

顧客情報は営業のスプレッドシートにある。案件の進捗はNotionにある。請求先情報はfreeeにある。やり取りの履歴はSlackやメールに散っている。しかも各部署が、それぞれ自分たちの一覧を「マスター」と呼んでいる。こういう状態は、どの会社でもかなりあります。

問題は、情報が散らかっていると探す時間が増えるだけでは済まないことです。確認待ちが増え、判断が遅れ、引き継ぎが難しくなり、結果として会社全体の仕事が止まりやすくなります。

本当に重いのは「探す時間」より「止まる時間」です

情報分散の話になると、多くの人は「探す時間がもったいない」と考えます。もちろんそれも正しいです。

でも実際には、それ以上に大きいのが止まる時間です。

必要な情報がどこにあるかわからない。最新版がどれかわからない。担当者に確認しないと進められない。顧客名はAの表ではこう、Bの表ではこう。請求先の担当者名が営業管理表と会計側で違う。こうなると、作業そのものは5分でも、動けない時間は何十分にもなります。

特に経営やマネジメントの立場では、この止まり方が重いです。誰かの返答待ちが発生するたびに、意思決定が遅れます。会議のたびに「それ、どの数字が正しいの?」が発生するなら、その会社はすでに遅くなっています。

マスターが複数ある時点で、もうマスターではありません

ここはかなり耳が痛い話ですが、重要です。

部署ごとに顧客マスター、案件マスター、請求先マスターのような似たデータを持ち始めると、更新のたびに差分が発生します。しかも当事者はそれぞれ「自分たちの表が正しい」と思っているので、ズレに気づくのは問題が起きた後です。

会社名の表記揺れ、担当者名の更新漏れ、請求先情報の差分、タグやステータスのズレ。これらは1つ1つは小さく見えても、積み上がるとかなり重い。なぜなら、そのたびに人が照合し、確認し、埋めるしかないからです。

つまり、情報が散らかっている会社で起きているのは「保存先が多い」ことではなく、正の情報源が定まっていないことです。

情報が散らかると、なぜ属人化が進むのか

情報が分裂している会社では、「あの件は○○さんしかわからない」が起きやすくなります。

これは、その人が優秀だから起きるのではありません。情報の置き場や流れが整理されていないので、その人の頭の中が差分を埋める装置になってしまっているのです。

たとえば、顧客とのやり取りはメールで管理し、商談メモは個人のメモ帳にあり、見積書は別のフォルダにある。進捗はNotionにあるが、契約情報は別。こうなると、全体像を知っているのは当人だけになります。担当者が変わるたびに引き継ぎが重くなり、抜け漏れも起きやすい。

つまり情報分散は、探し物を増やすだけでなく、人に依存する構造を作ってしまいます。

Fluxxが先に整えたのは、情報の置き場ではなく「どこが正か」でした

私たちFluxxでも、業務を仕組み化していく中で最初に効いたのは、派手な自動化ではありませんでした。むしろ、「どの情報はどこを正本にするのか」を決めることです。

タスク、議事録、顧客情報、ナレッジ。これらがそれぞれ別の場所に散らばっていると、どれだけツールを入れても全体は速くなりません。そこで、Notionを中心に情報の置き場と役割を整理し、誰が見ても「この情報はここを見る」とわかる状態を作っていきました。

すると、「あの資料どこでしたっけ」「この案件の最新状況は?」「請求先これで合っていましたっけ」の確認が減っていきます。情報が整理されると、単に探しやすくなるだけでなく、次の行動に移るまでの時間が短くなる。ここが本質です。

情報管理を見直すべき会社のサイン

次のような状態があるなら、情報管理は後回しにしないほうがいいです。

1. 情報の所在を人に聞いている。
検索ではなく、誰かの記憶に頼っている状態です。

2. 同じ情報を複数の表で持っている。
しかも各部署がそれぞれをマスターと呼んでいるなら、かなり危ないです。

3. 最新版の確認が毎回必要になる。
会議のたびに「どれが正ですか?」が出るなら、すでに遅くなっています。

4. 担当者が休むと仕事が止まる。
情報が人の頭の中で統合されている証拠です。

これらはどれも、「便利にしたい」ではなく「経営速度を落としたくない」という観点で見るべきサインです。

まとめ:情報管理は、整理整頓ではなく正本設計の話

情報管理というと、どうしても地味な話に見えます。ですが実際には、会社の判断と実行のスピードを左右する重要なテーマです。

情報が散らかっている会社は、探している時間よりも、止まっている時間のほうが長い。その結果、確認が増え、属人化が進み、仕事全体が遅くなります。

そしてその原因の多くは、「どこが正か」が決まっていないことにあります。逆に言えば、正本を決めるだけでも会社はかなり速くなります。

続けて読むなら、次は Vol.7 会社に眠る情報を、営業資産に変える です。整った情報基盤を、どう守りだけでなく攻めにも使うかを考えます。

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Author

大平 兼士

大平 兼士

CEO

神戸大学経済学部卒業後、株式会社ミクシィにてminimoの立ち上げやマッチングアプリのWEBマーケティングに従事。2018年5月に株式会社Fluxx設立。2019年より株式会社メディロムに参画し、現在はメディロム・シェアードサービス取締役を兼任。

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