
「いい感じで」と発注する前にしておくべき4つのこと
「いい感じで」から始まる制作は、なぜ少し遠回りになりやすいのか

「バナー、いい感じで作ってもらえますか」
この言葉、制作の現場で本当によく聞きます。
お忙しい経営者の方が細かい仕様まで言語化する時間を取るのは大変ですし、制作側への信頼があってこその「いい感じで」だと受け取っています。
ただ、この一言のあとに、どうしても手戻りが起きやすいのも事実です。
意外に思われるかもしれませんが、原因は制作会社の腕や相性というより、もう少し手前にあります。
制作物の仕上がりは、「作る前に何を握れたか」で大半が決まります。
私たちもかつて、ご依頼いただいた「いい感じで」をそのままお預かりして作り始めたことがあります。結果、初稿で認識のズレが生まれ、修正を重ねて、お互いにスケジュールが伸びてしまう。あの経験から学んだことが、この記事のベースになっています。
たとえるなら、はじめてお会いした方に「なんか美味しいもの食べたい」とご相談されたような感覚です。おしゃれな雰囲気がいいのか、しっかり食べたいのか、ご予算感はどうか。聞かないとわからないことがたくさんあるのに、「なんか」の一言にすべてが詰まっている。しかも、初対面。好みもアレルギーも、まだ共有できていません。
Web制作の「いい感じで」も、構造としてはこれに近いのだと思います。
制作物の「やり直し」が起きる、ほんとうの原因
初稿が上がってきて「思っていたのと少し違うな」と感じる瞬間、「別の制作会社を探してみようか」と考えられる方もいます。そのお気持ちは、私たちもよくわかります。
ただ、多くの場合、原因は制作会社の腕そのものではありません。
原因はもう少し手前にあることがほとんどです。「誰に届けるのか」「どこに出すのか」「何を伝えたいのか」。この3つを、発注する側と作る側で丁寧に擦り合わせないまま走り出している。そうなると、初稿で認識がズレ、修正してもまた少しずつズレていきます。
だからこそ、制作会社を替えるよりも、発注の入口を少し丁寧にするほうが、結果的に近道になることが多いんです。
作る前に決めること — 私たちがやっている「擦り合わせ」

私たちFluxxでは、制作に入る前に必ず「擦り合わせ」のお時間をいただいています。業界の言葉で言えば要件定義ですが、やっていることは難しくありません。
ターゲット。誰に届けたいのか。年齢層やお仕事だけでなく、その方がいまどんな不安や期待を抱えているのか。ここがぼんやりしていると、デザインもコピーも輪郭がぼやけてしまいます。
配信面。リスティング広告に出すのか、ディスプレイ広告なのか、リターゲティングなのか。同じバナーでも、出す場所で果たす役割がずいぶん変わってきます。
訴求軸。価格で届けるのか、手軽さで届けるのか。どちらが効くかを一度で見極めるのは難しいので、「仮説を2つ立てて、両方作って小さく検証する」という進め方をおすすめすることがよくあります。
判断基準。ここが一番、見落とされやすいポイントです。何をもって「良いバナー」とするのか。クリック率なのか、お問い合わせ数なのか。基準を先に決めておくと、出来上がったものを見たときに、感覚ではなく数字で「次はここを伸ばそう」と話ができます。
この4つを30分ご一緒に整理するだけで、修正のやりとりが自然と減っていきます。
実例 — 寺院向けサービスのリタゲバナー
最近お手伝いさせていただいた案件の話をさせてください。寺院向けにホームページ制作を提供しているサービスで、リターゲティング用のバナーが必要になりました。
「バナーを3サイズ作ってほしい」。ご依頼はシンプルでした。
ただ、ここでいきなり「いい感じのバナー」を3サイズ作っても、おそらく期待した反響は得られません。住職の方にバナー広告でアプローチするとはどういうことか、を先に整理する必要がありました。
住職の方は50代〜70代が多く、インターネット広告に普段から触れる機会は多くありません。「HP制作って高いのでは」「なんだか難しそう」。この2つの心理的なハードルが、お問い合わせの手前でブレーキになっているのではないか、と仮説を立てました。
そこで訴求軸を2つに分けて設計しました。「簡単・安心」で心理的なハードルを下げるパターンと、価格を先にお見せして不安を和らげるパターン。まずスクエアサイズで2パターン作り、反応を見てから3サイズに展開しました。
いきなり3サイズ×2パターンで6枚を作るのではなく、小さく試してから広げる。このやり方だと、大きな手戻りが起きにくく、起きたとしてもすぐに軌道修正ができます。
「バナーを作りたい」のか「お客様を増やしたい」のか

擦り合わせのなかで、私たちが大切にしていることがひとつあります。
いただいたご依頼の言葉を、最初にもう一度、一緒に問い直させていただくこと。
「リタゲバナーを作りたい」とご相談いただいたとき、本当に実現したいことは、バナーそのものではなく「お客様を増やしたい」「お問い合わせを増やしたい」だったりします。バナーは、そのための手段のひとつ。
そう整理できると、もしかしたら既存のお客様へのメルマガのほうが費用対効果が高いかもしれません。新しいバナーよりも、LPの導線を先に見直すほうが効くかもしれません。そうした選択肢も、一緒にテーブルに並べられるようになります。
ここを握らずにバナーだけを作ってしまうと、制作費も広告費もかけたのに「思ったほど反響が出なかったな」と感じる結果になりがちです。バナーの品質ではなく、そもそもの打ち手が目的と少しズレていた、というケースが多いんです。
「いい感じ」が通じるのは、お互いのことを知っているから
最後にひとつだけ。
「いい感じで」が通じる関係は、もちろんあります。何年も一緒に仕事をしてきたパートナーの間なら、それで十分に伝わることがある。
それは、お互いの考え方や判断の軸を共有できているからこそ成り立ちます。はじめましての関係で「いい感じで」を頼りに進めると、好みも大切にしたい世界観も、判断の基準も手がかりが少ないまま作り始めることになり、どうしても精度を上げにくくなります。
ひとつだけ、ご提案があります。日頃からSNSやブログで自社の考え方を少しずつ発信していただけると、制作側にとってはとてもありがたい手がかりになります。私たちFluxxでも、初回のミーティング前には必ずクライアントのSNSや発信を拝見しています。言葉にされていない部分をそこから読み取って、ミーティングに臨むようにしています。
「察してほしい」を積み上げるよりも、最初に30分だけ、一緒に擦り合わせる時間をいただく。そのほうが、制作物の精度もスピードも、ずっと良くなります。
バナー1本でも、LP1枚でも。「誰に・なぜ・何を」を最初にいっしょに整理してから作る。それだけで、仕上がりも成果も変わっていきます。
「いい感じで」でお願いしたくなる瞬間があるのは、私たちも同じです。だからこそ、その一言を口にされる前の30分を、ぜひ一緒に過ごさせてください。
広告運用から集客設計、業務の自動化まで
ツール選びから業務設計、自動化の実装まで——
すべて1社で完結できるのが私たちの強みです。



