
Vol.3 利益が出ているはずなのに、数字が合わない — 月次決算を自動化したら見えたこと
月が変わった翌日。朝9時に出社した経理担当が、そのまま夜まで請求書と向き合っている。あるいは、社長自身が営業の合間にfreeeを開いて、先月の数字をなんとか合わせようとしている。
利益は出ているはずなのに、どうも数字が合わない。売上の計上タイミングがずれている気がする。経費の未処理がどこかに残っている。そう思いながら、Excel、メール、freee、紙の領収書を行ったり来たりしている。
思い当たる方は、かなり多いのではないでしょうか。
月次が閉まらないとは、どういう状態か

「月次決算」と言うと少し構えるかもしれませんが、要はシンプルです。先月いくら入ってきて、いくら出て、いくら残っているか。それが月初の早い段階でわかるかどうか。
月次が閉まらない、というのは、この数字がいつまでもはっきりしない状態のことです。
なぜ閉まらないか。理由はたいてい同じです。データがバラバラの場所にあるからです。
売上はスプレッドシートに、経費はfreeeに、請求書はメールに添付されていて、領収書は紙のまま机に積まれている。受け取った請求書の金額をfreeeに手で打ち込み、発行した請求書は別のシートで管理している。月末になるとそれを全部突き合わせる必要があり、そこで初めて「あれ、この取引は」「この経費は何月分だ」というずれが出てくる。
突き合わせに時間がかかるのは、データの量が多いからではありません。同じ情報が複数の場所に散らばっていて、どれが正しいかわからない。これが本当の原因です。
月次が閉まらないと、何が起きるか

月次が遅れること自体は、直接的にお金を失うわけではありません。ですが、じわじわと経営判断を鈍らせます。
先月の利益がわからなければ、今月いくら使えるかの判断ができません。入金予定と支払予定が見えなければ、資金繰りの見通しが立ちません。「利益が出ているはず」なのに手元にお金がない、という状態が続くと、投資の判断も採用の判断も、なんとなく先送りになっていきます。
つまり、月次が閉まらないということは、経営の「いま」が見えないということです。ちょっと立ち止まって考えてみてください。1ヶ月遅れの数字で経営判断をしている状態は、バックミラーだけを見て運転しているようなものです。
社長が経理を兼ねている会社の場合

社員が5人以下の会社では、経理専任の担当者がいないことが珍しくありません。社長がfreeeに仕訳を入力し、請求書を作り、届いた請求書の支払処理をし、振込を確認する。
この場合、月初の3日間はほぼ経理に消えます。その間、営業も止まるし、クライアントへの対応も遅れる。社長が自分でやっている以上、他の人に振ることもできない。
「経理を雇えばいい」と言うのは簡単ですが、年商1〜2億規模でフルタイムの経理を採用するのは、コスト的にもタイミング的にもハードルが高い。正直に言うと、私自身もこの状態を長く続けていました。結果、社長が毎月同じ作業を抱えたまま、数年が経っていきます。
経理担当がいる会社の場合

経理担当がいれば月次が閉まるかというと、話はそう単純ではありません。
月次を閉めるために経理が必要とする情報の多くは、経理の手元にはありません。営業が持っている売上実績、現場が立て替えた経費、まだ届いていない請求書、承認待ちの支出。これらが揃わないと数字が確定しない。
結果として、月初の経理担当は社内を追いかけ回すことになります。「あの案件の請求書、もう出しましたか」「この立替、領収書はどこですか」「先月分の経費、まだ申請出てないですよ」。
経理が残業しているのは、仕訳の量が多いからではなく、情報を集めるのに時間がかかっているからです。
Fluxxでは、月次決算をどう変えたか

ここまで書いた構造は、数年前まで私たちFluxx自身が抱えていた問題そのものでした。
請求書の発行はfreeeで一件ずつ作り、届いた請求書はメールから手で保存し、支払予定は都度確認していました。月初になるとそれらを突き合わせる時間が必要で、数字が固まるまでに何日もかかっていた。これは珍しい話ではありません。
いま、この業務の大部分は自動で回っています。変えたことを具体的に書きます。
請求書の発行
Googleスプレッドシートにクライアントごとの請求データを入力し、そこからfreeeの請求書を一括で作成しています。作成後は対象のクライアントにメールで自動送付され、Slackにも「誰に・いくらの請求書を作成した」という通知が飛びます。
月初にfreeeの画面を開いて一件ずつ作る作業は、なくなりました。
受取請求書の処理
Vol.2で詳しく書いた請求書処理の仕組みと同じ流れで、届いた請求書はSlackのbotに転送するだけで自動処理されます。ここではVol.3ならではの話——処理されたデータがその先でどう活きるかを書きます。
振込リストの自動生成
受取請求書の索引簿には、AIが読み取った支払期日が入っています。この支払期日をもとに、当月が支払期限の請求書を自動で抽出し、振込先・金額・期日を一覧にした振込リストを生成します。月初に経理が手作業で「今月どこにいくら払うか」を調べる必要がなくなりました。
入金予定の一覧化
入金側も同様です。freee上の未入金請求書を自動取得し、入金予定の一覧をSlackに共有しています。「今月いくら入ってくるか」が、人が集計しなくても見える状態になっています。振込リストと合わせて見れば、今月の資金繰りが一目でわかります。
freee仕訳との連動
請求書の発行・受取は、freeeの仕訳登録とも連動しています。発行した請求書はfreee上で売上として自動計上され、受け取った請求書も取引として登録されます。月次の数字がリアルタイムでfreeeに反映されるため、「月末にまとめて仕訳を打つ」という作業自体がなくなりました。
月初に人がやることは、確認して判断するだけになった

以前は月初の経理作業に10時間以上かかっていました。いまは数十分です。
数十分で何をしているかというと、自動処理の結果に異常がないかの確認と、例外的な取引の判断です。請求書の作成、受取請求書の保存、振込リストの作成、入金予定の一覧化。こうした定型作業から人を外したことで、月初に人がやるべき仕事が「作業」から「判断」に変わりました。
そして、月次が早く閉まるようになった結果、経営の数字がリアルタイムに近い精度で見えるようになりました。今月あといくら使えるか、資金繰りに問題はないか、利益率は想定通りか。こうした問いに、感覚ではなく数字で答えられる状態になっています。
月次が閉まる速さは、経営判断の速さに直結する
月次決算の自動化というと、経理の仕事を減らす話に聞こえるかもしれません。もちろんそれも大事ですが、本質はそこではないと思っています。
月次が早く閉まるということは、経営の現在地が早くわかるということです。
利益が出ているはずなのに数字が合わない。もしそう感じているなら、合わないのは利益ではなく、数字が見えるまでの速度かもしれません。データが散らばっていて、突き合わせに時間がかかり、確定が遅れている。その構造を変えれば、見えてくるものは同じ数字でも、見えるタイミングが変わります。
私たちFluxxでは、こうした月初業務の分解と自動化を、使用ツールの選定からスクリプトの構築まで一気通貫で組んでいます。経理の負荷を減らすだけでなく、経営判断のスピードを上げるための基盤として、月次決算の仕組み化は最初に手をつけるべき領域だと思っています。
次回のVol.4では、「あの人がいないと回らない」が口癖になっている会社の構造と、属人化を解消する方法を書きます。
業務の仕組み化、
どこから手をつけるか一緒に整理します。
ツール選定から業務設計、自動化の実装まで——
御社の業務に合わせた仕組みを、1社で構築できます。


