Vol.5 毎月届くツールの請求書に「これ要る?」と思ったら — Slackを無料にしても業務が回っている理由

Vol.5 毎月届くツールの請求書に「これ要る?」と思ったら — Slackを無料にしても業務が回っている理由

コスト削減

月初、クレジットカードの明細が届く。Slack、Notion、Zoom、freee、名刺管理……。1行ずつ見ていくと、「これ何のツールだっけ?」というのが必ず1つはある。

前回のVol.4では、「あの人がいないと回らない」という属人化の問題を取り上げました。仕事を書き出して、誰でも回せる固定フローに落とし込むことが大事だという話でした。では、そのフローを日々支えているツールはどうでしょうか。今回は、多くの会社がつい後回しにしてしまう「毎月のツール代、本当に全部必要か?」という話です。

月初に届く請求メール、全部覚えていますか

役割不明のツール一覧

月初になると、クラウドサービスの請求書やクレジットカード明細がまとめて届きます。Slack、Notion、Zoom、freee、名刺管理、プロジェクト管理、電帳法対応ツール。1つひとつは月に数百円から数千円でも、合計するとそれなりの金額になります。

ここでちょっと立ち止まって考えてみてください。「これ、何のツールだっけ?」と思った経験、ありませんか。

問題は金額そのものだけではありません。本当に気にすべきなのは、そのツールが会社の中でどんな役割を担っているのか、誰も説明できない状態になっていることです。これ、思い当たる方は意外と多いのではないでしょうか。

ツールの役割が決まっていないと何が起きるか

情報の重複が生む人的コスト

多くの会社では、ツールを導入するときに「便利そうだから入れてみよう」で始まります。それ自体は悪くありません。私たちも最初はそうでした。ただ、そのまま使い続けると、いつの間にか機能が重複し始めるんです。

典型的なのはこういう状態です。

  • タスク管理をSlackでもNotionでもやっている
  • ファイル共有をGoogle DriveでもSlackでもやっている
  • 顧客情報がスプレッドシートにも名刺管理ツールにもfreeeにもある

どれも「使えている」ように見えます。でも、同じ情報を複数の場所で管理している時点で、すでにコストが発生しています

しかもそのコストは、ツールの月額料金ではありません。ツール同士がつながっていないために、間に立ってコピペしている人の時間です。Slackに来た依頼をNotionに転記する。メールの添付ファイルをGoogle Driveに保存して、さらにスプレッドシートに記録する。こうした作業が毎日少しずつ積み重なっています。

見えにくいですが、これが「ツールを入れたのに仕事が減らない」の正体です。もしかすると、御社にも心当たりがあるかもしれません。

ツールの見直しに必要な、2つの考え方

フロー情報とストック情報

ツールの役割を整理するうえで、私たちFluxxが日頃から使っている考え方があります。情報をフローストックに分けるというものです。

フロー情報とは、リアルタイムの通知や会話のことです。「いま知らせたい」「いま確認したい」という一時的な情報の流れですね。

ストック情報とは、あとから検索したり参照したりする蓄積型の情報です。ナレッジ、タスク、顧客マスター、議事録などがこれにあたります。

この2つを同じツールで扱おうとすると、必ずどちらかが犠牲になります。チャットツールにナレッジを貯めれば流れていく。データベースツールでリアルタイムの会話をしようとすると使いにくい。

これがツール見直しの1つ目の考え方です。フロー情報を流す場所と、ストック情報を溜める場所を分ける

そして2つ目は、ストック情報をどこに持つかです。

請求書の保存、名刺の管理、顧客データの蓄積——こうした「溜めておいて、あとから検索する」データには、専用ツールが必要だと思われがちです。電帳法対応ツール、名刺管理ツール、顧客管理ツール。それぞれに月額を払って、それぞれにデータを預けている。

ただ、ちょっと立ち止まって考えてみてください。専用ツールにデータを預けたからこそ、逆にそのデータが使いにくくなっていないでしょうか。

名刺管理ツールに入っている取引先情報を、請求書の発行に使おうとしたら手動でコピペが必要。電帳法対応ツールに保存した請求書データを、月次の集計に使おうとしたらCSVで書き出して別のツールに読み込ませる。専用ツールの中ではきれいに管理されているのに、ツールの外に出した瞬間にデータが死ぬ。これでは、ストック情報が「溜まっているだけで活用されていない」状態です。

すでに社内にあるツールのデータベース機能——たとえばNotionやスプレッドシート——に集約すれば、他のツールや自動処理から直接参照できます。専用ツールに月額を払い続ける前に、「これ、今あるツールでできないか?」と考えてみる。それが2つ目の軸です。

実例1:Slackを無料プランにしても困らない理由

Slack→Notion自動移行フロー

私たちFluxxは、Slackを2014年のサービスイン近くからずっと使ってきました。累計で支払った金額は、おそらく数百万円になっています。それだけ依存してきたツールですし、今でも毎日使っています。感謝はしています。

ただ、正直に言うと「この金額を払い続ける必要があるのか?」とずっと思っていました。

結論として、有料プランから無料プランに切り替えました。「え、無料プランって90日でメッセージ消えますよね?」と聞かれることがありますが、困っていません。

理由は、Slackの役割をフロー情報に限定したからです。Slackには「いま伝えたいこと」「いま確認したいこと」だけを流す。通知のハブ、リアルタイムの連絡手段。それ以上の役割を持たせない、と決めました。

では、あとから振り返る必要がある情報はどこに置くのか。すべてNotionに集約しています。タスク、顧客情報、ナレッジ、議事録、業務マニュアル。Slackで話した結果として残すべき情報は、Notionに記録する。

しかも、この移行を人が手動でやっているわけではありません。Slackの会話の中から残すべき情報を自動でNotionに移し、分類・保存する仕組みを入れています。「Slackで話したことをNotionにも書いておかなきゃ」という二度手間は発生しません。

だから、90日でSlackの履歴が消えても問題ありません。消えて困る情報はSlackにない。ストック情報はすべてNotionに移っているからです。

この判断だけで、年間で約36万円のコストが浮いています。10年近く払い続けてきた金額を考えると、もっと早くやればよかったと思っています。

ちなみに、無料プランにするとSlack Connect(外部の会社とチャンネルを共有する機能)は使えなくなります。ただ、正直なところ、Slack Connectを使うには双方が有料プランである必要があり、そのパターン自体が多くありませんでした。外部とのやり取りが必要なら、双方で無料のワークスペースを作るなど、回避方法はいくらでもあります。ツールを減らしたのではなく、役割を明確にしただけです。

実例2:電帳法対応に専用ツールは要らない

電帳法対応の自動処理フロー

電子帳簿保存法(電帳法)という法律があります。2024年1月から、電子で受け取った請求書や領収書は電子データのまま保存することが義務づけられました。

この対応のために月額数万円の専用ツールを契約している会社は少なくありません。逆に、よくわからないまま見て見ぬふりをしている小規模企業もあります。どちらの気持ちもよくわかります。

私たちは、どちらでもない方法を取っています。

仕組みはこうです。メールで届いた請求書をAI-OCR(AIを使った文字読み取り)で処理し、取引先名・日付・金額など必要な項目を自動で読み取ります。読み取った情報とPDFを所定の場所に保存し、処理が完了したらSlackに通知が届きます。

特別な専用ツールは使っていません。メール受信、AI処理、ファイル保存、通知という、すでに社内にある仕組みの組み合わせで法対応ができています。

電帳法対応に求められる要件(取引日・金額・取引先で検索できること、改ざん防止措置があること)も、保存先の設定とデータの構造化で満たせます。専用ツールでなければ対応できないわけではないのです。

実例3:名刺管理に専用ツールは要らない

名刺→AI-OCR→Notion

名刺管理も同じ構造です。有名な名刺管理ツールを使っている会社は多いのではないでしょうか。月に数万円の利用料がかかるものもあります。

私たちは、名刺のデータ化にAI-OCRを使い、読み取った情報をNotionの取引先データベースに登録しています。名刺の画像を読み込むと、会社名、氏名、役職、メールアドレス、電話番号などが構造化されてデータベースに入ります。

月額コストはゼロです。名刺管理のためだけに専用ツールを契約する必要がありません

もちろん、大企業のように名刺を月に何百枚も交換し、組織全体で名寄せが必要な規模であれば、専用ツールの価値は十分にあります。ただ、小規模・中規模の会社で、月に数十枚の名刺を管理するためだけに月額数万円を払い続ける必要があるかというと、多くの場合は不要です。

コストを下げたいのではなく、役割を決めたいだけ

ここまで3つの実例を挙げましたが、私たちの目的は「とにかく安くする」ことではありません。

やりたいのは、それぞれのツールが何のためにあるのかを明確にすることです。役割が決まっていれば、必要なものは残し、重複しているものは統合できます。専用ツールでなければできないと思い込んでいたことが、実は手元のツールの組み合わせでできることも見えてきます。

逆に言えば、役割が曖昧なままツールを足し続けると、月額コストだけでなく、ツール間の隙間を埋める人的コストも増え続けます。

まずは自社のツール一覧を眺めて、「このツールの役割は何か」「同じ役割を担っているツールが他にないか」を確認してみてください。それだけで、削れるもの、統合できるもの、本当に必要なものが見えてくるはずです。

次回のVol.6では、ここまでの話を踏まえて「結局、何から手をつければいいのか」を整理します。

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Author

大平 兼士

大平 兼士

CEO

神戸大学経済学部卒業後、株式会社ミクシィにてminimoの立ち上げやマッチングアプリのWEBマーケティングに従事。2018年5月に株式会社Fluxx設立。2019年より株式会社メディロムに参画し、現在はメディロム・シェアードサービス取締役を兼任。